「最近、お父さんの耳が遠くなってきてね」
現場でも、家族からよくこんな相談を受けます。
でも、難聴って「年だから仕方ない」で済ませていいものでしょうか。
実は、難聴は認知症の大きなリスク要因のひとつ。
でも、意外と知られていないのです。
難聴が認知症のリスクだと知っていましたか?
2020年、世界的な医学誌『Lancet』が発表した認知症予防の報告書があります。
そこで挙げられた「予防できる12のリスク因子」の中で、最も影響が大きいとされたのが“難聴”でした。
えっ。
高血圧でも糖尿病でもなく、難聴。
しかも、中年期(45〜65歳)の難聴が、将来の認知症リスクを大きく引き上げると言われています。
なぜ「聞こえない」と認知症になりやすいのか
理由はいくつかあります。
- 聞き取ろうと脳が頑張りすぎて、記憶や思考に使うエネルギーが減る
- 会話が減り、人との交流が少なくなる
- 外出が億劫になり、刺激が減る
- 聴覚からの情報が脳に届かず、脳が萎縮しやすくなる
つまり、「聞こえない」は耳だけの問題ではなく、脳と心の問題でもあるのです。
正直、私も詳しくは知らなかった
PTとして働いていても、リハビリの中心は「体」。
耳のことまで深く考える機会は、正直あまりありませんでした。
父の介護をしていたときも、父の耳が少し遠くなっていたのは気づいていたのです。
でも「年だしね」で終わらせていた。
今思えば――
もっと早く補聴器を検討してあげていたら、父の世界はもう少し広かったのかもしれない。
そう思うと、少し胸が痛みます。
「年のせい」で片付けてしまう怖さ
難聴の怖いところは、本人も家族も気づきにくいことです。
「テレビの音が大きいな」
「何度も聞き返すな」
「返事がズレてるな」
そんなサインがあっても、つい「年のせい」にしてしまう。
いやいや、それで済ませていいのでしょうか。
日本は補聴器の普及率が先進国の中でも低いと言われています。
値段の問題、見た目の抵抗感、「まだ必要ない」という思い込み。
でも、認知症のリスクを考えたら、もっと気軽に相談できる空気があってもいいはずです。
👉 補聴器と集音器の違い、値段、補助金まで現場目線でまとめた記事はこちら → 補聴器と集音器って何が違うの?
それでも、大切にしたいこと
現場で高齢の利用者さんと関わっていて思うのは、「聞こえる人」は表情が豊かだということ。
会話に参加できる。
冗談に笑える。
名前を呼ばれて振り向ける。
当たり前のようで、これが脳への一番の刺激なのだと思います。
逆に、聞こえにくくなった方は、だんだん会話の輪から外れていく。
そして少しずつ、表情が減っていく。
そういう場面を、何度も見てきました。
「聞こえ」がもっと大事にされますように
難聴は、ただ「不便」なだけじゃない。
脳の健康、心の健康、そして認知症予防にも深く関わっている。
もし家族の耳が遠くなってきたら。
もし自分自身が聞き返すことが増えてきたら。
「年だから」で終わらせず、一度耳鼻科や補聴器相談に足を運んでみてほしいのです。
聞こえることは、世界とつながること。
そのことが、もっと多くの人に知られますように。



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