リハビリを止めるもの、その一つが「めまい」
リハビリを続けたい。動かせる体を、もっと動かしたい。
そう思っている利用者さんでも、ある日突然「今日はちょっと無理」となる日があります。
その大きな原因のひとつが、めまい。
立ち上がった瞬間にぐらっとくる。
ふわふわして、リハビリの台に座っていられない。
そういう日が続くと、せっかく上向いていた回復も、ぴたっと止まってしまいます。
「ずっと船酔いみたい」――ある利用者さんの話
ポテチの担当している利用者さんに、こう話してくれた方がいます。

起きてる間、ずっと船酔いしてるみたいなのよ
聞いた瞬間、ぞわっとしました。
ポテチも、若い頃に船釣りに行ったことがあります。
波に揺られて、半日かけて陸に戻ってきても、夜まで体が揺れてる感じが消えない。
床がふわふわして、まっすぐ歩いている自信が持てない。
あれがずっと続くって、想像するだけで辛い。
「リハビリしましょう」とお誘いしても、その方は申し訳なさそうに、
「今日は気持ち悪くて、ちょっと無理」と。
責められないんです。本当に、辛いから。
めまいには、大きく4つのタイプがある
ひと口に「めまい」と言っても、実はいろんな種類があります。
原因も、感じ方も、対処法も、それぞれ違います。
① 回転性めまい
自分や周囲がぐるぐる回って見える、激しいタイプ。
原因の多くは、耳の中(内耳)の問題。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)、メニエール病、前庭神経炎など。
頭の位置を変えた瞬間にズドンと来ることが多い。
② 浮動性めまい
ふわふわ・ぐらぐらする、船酔いのような感じ。
さきほどの利用者さんは、まさにこのタイプ。
原因は脳・血流の問題、加齢、薬の副作用、首の凝りなど。
慢性化しやすいのが、つらいところ。
③ 立ちくらみ(前失神)
立ち上がった瞬間、目の前が暗くなる、ふっと意識が遠のく感じ。
原因は血圧の急降下(起立性低血圧)、貧血、不整脈など。
高齢者ほど起きやすい。
④ 歩くとふらつく不安定感
じっとしているとめまいはないけど、歩き出すとふらつく。
脳の老化、神経の障害、加齢性のバランス機能低下が原因のことが多い。
転倒リスクが高い。
ご本人やご家族が「めまい」と言うとき、どのタイプかで対処もガラッと変わります。
種類ごとに、対処法(リハビリ)が違う
「めまいに対するリハビリ」は、前庭リハビリテーションという分野で、ちゃんと体系があります。
ポテチの現場でも取り入れているメニューを、ざっくりご紹介します。
① 回転性めまい(BPPV)には → 耳石移動法
頭の位置をゆっくり変えて、内耳の中でずれている「耳石」を元の位置に戻す手技。
医師や専門のセラピストが行う、エプリー法というやり方が有名。
うまくはまれば、その日のうちに楽になることもある。
② 浮動性めまいには → 慣れの訓練(habituation)
めまいを起こしやすい動き(首を傾ける、振り返る、立ち上がるなど)を、あえて少しずつ繰り返す。
体が「これは大丈夫」と覚えてくれて、めまいの感じ方が和らいでくる。
ただし、急に強くやると逆効果。ゆっくり、少しずつが鉄則。
③ 立ちくらみには → 起立耐性訓練
ベッドから座る、座ってから立つ、をゆっくりゆっくり。
急に立ち上がらないクセを体に染み込ませる。
水分と塩分の補給も大事。
④ 不安定感には → バランス訓練
片足立ち、つま先立ち、タンデム歩行(一本線の上を歩く)など。
転ばないように、必ず手すりや人のそばで。
安全第一で、量より質。
ぐるぐる回るタイプから、ふわふわ続くタイプまで、
どのめまいにも、自分でできる体操があります。
前庭リハビリの第一人者・新井基洋先生の本は、自宅で続けるためのヒントが満載。
焦らず、少しずつ慣らしていく
めまいのリハビリで一番大事なのは、焦らないこと。
「治そう、治そう」と頑張りすぎると、めまいが悪化することもあります。
体が「危ない」と過剰反応してしまうから。

今日できなければ、明日また
そのくらいの気持ちで、ちょっとずつ続けていくのが、結局いちばんの近道。
ポテチも、無理にリハビリを進めず、その日の体調を聞いてから内容を決めるようにしています。
薬に頼らず、自分のペースで取り組みたい方には、こんな本も。
それでも、ゆっくり寄り添うことが大事
めまいは、外から見えない辛さです。
「気のせい」「気合いが足りない」と言われてしまうこともある。
ご本人は、本当に困っているのに。
リハビリは、その辛さを否定せず、できる範囲で体を動かし続けるための時間。
立てなくても、座ってできる動きはある。
動けなくても、お話を聞くだけで、気持ちが軽くなることもある。
「ずっと船酔いみたい」と言ってくれた利用者さんとも、今日もゆっくり、ゆっくり、リハビリを続けています。

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