「ちゃんと食べてますよ〜」
そう言いながら、椅子からずり落ちそうになっているご利用者を見かけたこと、ありませんか。
食事の「内容」に気を配るのと同じくらい、「姿勢」って大事なんです。
むしろ、姿勢が崩れたまま食べているとどれだけ気をつけていてもむせやすくなる。
今回は、うちの施設のSTさん(言語聴覚士)が作ってくれたイラストをもとに、誤嚥リスクを上げるNG姿勢4つをまとめました。
「そんな姿勢してないよ」と思っているあなた、ちょっと待って。
案外、気づかないうちになってたりするんです。
目次
- なぜ姿勢が「誤嚥」に関係するの?
- NG姿勢① 円背(背中が丸まっている)
- NG姿勢② 顎が前に突き出ている
- NG姿勢③ 仙骨座り・ずり落ち
- NG姿勢④ 体幹が左右に傾いている
- じゃあ、正しい姿勢ってどんな姿勢?
- イラストを見て、ちょっとだけ意識してみてほしい
なぜ姿勢が「誤嚥」に関係するの?
誤嚥というのは、食べ物や飲み物が食道ではなく気管に入ってしまうこと。
むせや肺炎につながる、食事介護のなかでも特に気をつけたい問題です。
誤嚥は「飲み込む力が弱い人に起こるもの」と思われがちですが、
実は姿勢の崩れが引き金になることも多いのです。
のどの構造をざっくり説明すると、食べ物が通る「食道」と、空気が通る「気管」は隣り合っています。
姿勢が崩れると、この2つの位置関係がズレやすくなる。
飲み込む動作が上手くいかなくなって、誤嚥しやすくなるんですね。
つまり、飲み込みの機能自体に問題がなくても、姿勢のせいで誤嚥が起きることがある、ということ。
逆に言えば、姿勢を整えるだけでリスクを下げられることもある、ということです。
NG姿勢① 円背(背中が丸まっている)
背中がぐうっと丸まった「円背」の姿勢。
高齢の方に多く、「もともとこういう体だから」と見過ごされがちです。

でも、円背の状態で食べると、
首が前に突き出やすくなって、気道が圧迫されやすくなります。
また、お腹が圧迫されて、嚥下(飲み込み)に必要な筋肉が動きにくくなることも。
背もたれをうまく使ったり、クッションで背中をサポートしたりするだけで、
ずいぶん楽な姿勢で食べられることがあります。
NG姿勢② 顎が前に突き出ている
「前のめりになって食べている」イメージです。
顎がぐっと前に出て、首の後ろ側が伸びている状態。

この姿勢、実は気道が開きやすくなるんです。
つまり、食べ物が気管に入り込みやすい。
「気道が広がってるならいいんじゃ?」と思いそうですが、逆なんですね。
気道が開いているほうが、食べ物が入り込むルートが確保されてしまうイメージです。
正しくは、顎を軽く引いた状態で食べるのが理想。
「少し顎を引いて」の一声で改善することもあります。
NG姿勢③ 仙骨座り・ずり落ち
椅子に浅く座って、お尻がずるずると前にずれてしまっている状態。
骨盤がぐっと後ろに傾いて、いわゆる「仙骨座り」になっています。

「えっ、それって単純に危なくない?」
そうなんです、転落リスクもあるんですが、
それに加えて体幹が不安定になって嚥下の動作がしにくくなるんです。
食事に集中するためには、座位が安定していることが大前提。
足が床にしっかりついているか、お尻が椅子の奥まで入っているかを確認してみてください。
NG姿勢④ 体幹が左右に傾いている
気づきにくいですが、片側に傾いたまま食べているケースも多いです。
麻痺がある方や、筋力が落ちた方に起きやすい。

体幹が傾くと、のどの左右のバランスが崩れて、片側に食べ物が偏りやすくなります。
その結果、うまく飲み込めずに残留したり、むせたりすることが起きやすくなります。
クッションやアームレストを使って、体幹を真ん中に近づけてあげることが大切です。
「この人はいつもちょっと傾いているから…」で済ませてしまわずに、環境を整えてあげてほしいのです。
じゃあ、正しい姿勢ってどんな姿勢?
では、食事のときの「理想の姿勢」をざっくりまとめると、こんな感じです。
- ✅ 椅子に深く座り、背もたれに背中がついている
- ✅ 足の裏がしっかり床についている(足が浮いている場合は台を)
- ✅ 骨盤が立った状態(後ろに倒れすぎていない)
- ✅ 体幹が左右にまっすぐ、傾いていない
- ✅ 顎が軽く引けている(あごを強く引きすぎもNG)

「全部完璧に」は難しくても、
一つひとつ確認する習慣が、誤嚥のリスクをじわじわ下げていくのだと思います。
イラストを見て、ちょっとだけ意識してみてほしい
今回のイラスト、うちのSTさんがわざわざ作ってくれました。
「見てわかるものを作りたい」って言って、丁寧に仕上げてくれたんですよね。
ありがたいなぁ、と思いながら、ポテチとしても改めて勉強になりました。
PTとして姿勢のことは知っているつもりでいたけど、
「食事との関係」という視点で整理してもらうと、また違って見えてくるんです。
食事の介助をしている方、食事の見守りをしている方、
あるいは自分の家族の食事が心配、という方にも、
ぜひこのイラストを参考にしてほしい。
「うちのおじいちゃん、なんかずり落ちてる気がする…」
「食べるとき顎が出てるかも」
そのちょっとした気づきが、誤嚥を防ぐことにつながるのです。
むせた、むせてないだけで判断するのではなく、
姿勢から見直す視点が、もっと広まってくれたらいいな、と思っています。
それでも――「姿勢を整えてあげたいけど、どうすればいいかわからない」という場合は、
施設のSTさんやPTさんに相談してみてください。

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