先日、入居者様が突然お亡くなりになりました。
最近は持病の腰痛が悪化し、いつ見ても苦虫を噛み潰したような顔ばかり。でも、医者には掛かろうとせず、一度転倒もされました。「整形外科で診てもらいましょう」と勧めても、「嫌だ」の一言。痛そうなのに…。その頑固さも、今となっては懐かしく感じます。
見た目は元気なお爺ちゃん。でも実は、若い頃に脳梗塞を患い、言葉が出にくく、高次脳機能障害も抱えていました。外を歩くと、自転車や車との距離感がうまく取れず、ふらっと車道に寄ってしまうことも。そんな時は、よく私が腕を引っ張って、車から離していました。
老健と受診のルール
老健では、調子が悪くならない限り受診はしません。介護保険で運営されているため、外来受診をすると医療保険を使い、その受診料を施設が負担する仕組みだからです。
ただし、急変は別。命に関わる時は、ためらわず受診します。そこを受診させない施設は…私はないと信じたいです。
あの日の出来事
その日、彼はトイレで意識を失い、職員が急いでベッドに運び、救急処置をしました。一時的には落ち着いたかに見えましたが、夜中の見回りで息をしていないことに気づいたのです。
入所までの経緯
彼は若くして脳梗塞になり、働けなくなりました。年金はわずか、貯金もなく、結婚もしていない。身元引受人は10歳以上年の離れた兄だけ。
遠方の老健で3年間暮らしていましたが、兄が「自分たちが元気なうちに、もっと近くで暮らさせたい」と希望し、当施設へ入所。
施設では後見人をつけ、兄と一緒に暮らせるよう、自宅環境を整える準備をしていました。自宅訪問の日取りも決まっていて…本当にあと少し、だったのです。
もっと見せたかった景色
彼には、まだまだ見せたかった景色がたくさんありました。春の桜も、夏の花火も、秋の紅葉も。
老健は、入所中にリハビリで体力を保てるメリットがあります。でも反面、中にいることで新しい病気を発見しにくい一面もあります。
だから私は、長くても4〜5ヶ月、理想は3ヶ月で退所し、次の生活へ移るのが一番だと思っています。
人は誰しも、予定通りにいかない時があります。だけど、過ごした日々の中で交わした言葉や視線、触れた手の温かさは、ちゃんと残っていくんだと信じています。
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