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杖を忘れた冒険──転倒してしまったあの方の、らしさと教訓

介護の現場から

退所してデイに通所中の利用者さん。先日いらしたら、なんと左手が包帯でぐるぐる巻きになっているじゃないですか!?
「何したんだい?」と聞くと、「コンビニに買い物に行って、転んじゃったの」とのこと。どうやら左手にヒビが入ってしまったようです。

「杖、持たずに出ちゃったの」

よくよく話を聞くと、杖を持たずに出かけてしまったとか。うーん……。ときどきふらつくから、やっぱり杖は持ってほしいんですよね。

でも思い出しました。入所中も、夜な夜な職員に隠れて歩く練習をしていたことを。
同室の方がこっそり教えてくれたのです。

あの人、車椅子じゃなくて、歩いてトイレ行ってるわよ。廊下に誰もいないの確認してから、さぁーって歩いていってるの。

――まぁ、そんな彼女ですから、今回もちょっと冒険してしまったのでしょう。利き手の右手じゃなかったのが、せめてもの救いでした。

“歩ける”と“安全に歩ける”は別のスキル

リハビリを頑張って「歩けるようになった」人ほど、“できる自分”を確かめたくなる気持ち、よく分かります。
でも、歩ける=安全に歩けるとは限りません。特に屋外・買い物・段差・混雑などは、屋内歩行より難易度が上がります。

今日からできる:杖の「習慣化」チェック

  • 玄関フックに杖の定位置を作る(靴・鍵とセット)
  • 外出チェックリスト:鍵・財布・携帯・杖を声に出して確認
  • バッグに折りたたみ杖を常に一本(スペアの発想)
  • 買い物は時間帯を選ぶ:空いている時間に短時間で
  • 段差・暗がり回避:明るい道、エレベーター優先

スタッフ目線のひと工夫

デイでは毎日顔を合わせるからこそ、「声かけ一つ」で行動が変わります。
転倒予防のための杖習慣を自然に促すには、こんな工夫が効果的です。

  • 🌼 送迎車から降りるとき
    「杖、ここに置いておきますね」ではなく、
    → 「降りたらまず杖を持ちましょうね。一緒に確認しますね」
  • 🍵 ホールへの移動時
    「転ばないように気をつけて」よりも、
    → 「この廊下、少し滑りやすいので杖ついてゆっくり行きましょう」
  • 🥄 トイレ誘導のとき
    「大丈夫ですか?」ではなく、
    → 「杖持っていきましょう。入り口で私が受け取りますね」
  • 🧺 活動参加のとき
    「歩けるから大丈夫ですよね」ではなく、
    → 「杖があると安心ですから、そばに置いておきましょう」
  • 👋 帰り際の声かけ
    「忘れ物ないですか?」よりも、
    → 「荷物はこちらで持つので、杖をついてしっかり歩いてください」

こうした声かけを積み重ねることで、「杖=安心の相棒」というイメージが自然と定着します。
できることを奪わずに、そっと安全を添える――それがデイでのリハビリの醍醐味かもしれません。

まとめ:その人らしさを守るための「杖」

冒険心は、その方の意欲や生きる力の表れ。だからこそ、杖という小さな工夫で“大きなリスク”を下げるのが私たちの役目だと思います。
次の外出は、杖といっしょに、また安全に。

本記事は個人の経験に基づく記録です。医療的判断が必要な場合は、主治医・専門職にご相談ください。

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