「お母さんの通帳って、どこにあるんだっけ?」
これ、元気なうちは「あとで聞けばいいや」と思いがちな話です。
でも、老健で働いていると、ご家族からこんなお話をよく聞きます。
「親が急に入院して、通帳の場所が分からなくて、本当に困りました……」と。
今日は、聞きにくいけれど聞いておきたい「親のお金まわりの話」。
角を立てずに切り出すコツを、ポテチがお伝えします。
なぜ「元気なうち」に聞いておくのか
結論から言ってしまいます。

親御さんが倒れてからでは、もう「本人にしか分からないこと」を聞き出せません
脳梗塞、認知症、急な入院。
これらは、本当に「ある日とつぜん」やってきます。
そして、いざというときに必要になるのが、通帳・印鑑・保険証券、そして年金手帳。
これらの「ありか」が分からないと、入院費の支払いも、保険金の請求も、何もできなくなってしまうんです。
銀行口座は、本人が認知症と判断されると凍結されることもあります。
こうなると、家族でも自由にお金を引き出せなくなり、生活そのものが立ちゆかなくなることも。
でも、ストレートに聞くのはNG
「お母さん、通帳どこにあるの?教えて」
これ、いちばんやってはいけない聞き方です。
なぜかというと、親御さんからこう受け取られてしまうから。
「お金を狙っているのか」「もう死ぬのを待っているのか」と。

親世代にとって「通帳」は、人生をかけて貯めた、自分の尊厳そのものです
だからこそ、聞き方には、ちょっとした工夫が必要なんですね。
切り出し方のコツ、4つ
ポテチがご家族におすすめしているのは、この4つの切り口です。
角を立てずに切り出すための4つの入り口
- ① 「自分の話」から始める
- ② ニュースや知人の話を借りる
- ③ 「防災」を切り口にする
- ④ 入院や健康診断のタイミングを使う
① まず「自分の話」から始めてみる
いちばんおすすめなのは、こちらから先に話すことです。
たとえば、こんなふうに。

私も最近、もしものときのために、通帳とか保険のこと、ノートにまとめ始めたんだ。お母さんも、よかったら一緒にやらない?
「あなたのために聞いてる」ではなく、「私もやってるから、一緒にやろう」。
この切り口だと、親御さんも身構えにくくなります。
押し付けがましさが消えるんですね。
② ニュースや知人の話を借りる
第三者の話をはさむのも、とても効きます。

友達のお母さんがね、急に入院しちゃって、通帳の場所が分からなくて家族が大変だったんだって
こうすると、「責められている」感じが、まったくしません。
そして、親御さんのほうから「うちはどうしようかね」と話が広がることも、よくあります。
ポイントは、説教くさくならないこと。
「だから、お母さんも教えてよ」と続けず、まずはそこで一旦止めるのがコツです。
③ 「防災」を切り口にする
地震、火事、台風。
「もしものとき、何を持ち出すか家族で決めておきたい」と言えば、通帳や印鑑は自然に話題にできます。
「貴重品リスト」を作ろう、という形なら、誰も傷つきません。

「死」を連想させない言葉を選ぶのが、コツのひとつです
④ 入院や健康診断をきっかけにする
親御さんが入院したとき、健康診断で何か指摘されたとき。
こういうタイミングは、自然に切り出せる絶好の機会です。
「今回は大事に至らなかったけど、次に何かあったときのために、保険証券だけでも場所を共有しておかない?」
こんなふうに、「ついで」のテンションで聞けると、お互いに重くなりません。
聞くときの3つのルール
切り出せたとして、実際に聞くときには、ちょっとしたルールがあります。
聞くときに守りたい3つのルール
- 一度に全部聞かない(何回かに分ける)
- 「教えて」より「一緒に整理しよう」の姿勢で
- 「使うわけじゃない、知っておくだけ」と必ず添える
いきなり通帳・印鑑・保険・年金・不動産……と矢継ぎ早に聞くと、親御さんは「やっぱり財産が目当てか」と感じてしまいます。
1回目は「保険証券だけ」、2回目は「通帳の置き場所だけ」。
このくらい、ゆっくりでいいんです。
便利な道具:エンディングノート
「自分から切り出すのは、やっぱりちょっと……」というご家族には、エンディングノートをおすすめしています。
書店や100円ショップで売っている、市販のノートでOKです。
これを2冊買って、「一緒に書いてみない?」と渡すと、ぐっと話しやすくなります。

「ノートが聞いてくれる」形にすると、親子の間に角が立ちません
主な記入項目は、こんな感じです。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 預金口座 | 銀行名・支店名(暗証番号は書かない) |
| 印鑑 | 実印・銀行印の保管場所 |
| 保険証券 | 保険会社名と証券の保管場所 |
| 年金手帳 | 保管場所 |
| 不動産 | 権利証の保管場所 |
| 医療情報 | かかりつけ医、常用薬、アレルギー |
絶対にやってはいけないこと
ここで、大事な注意点を。
聞き出してはいけないもの・預かってはいけないもの
- 暗証番号(キャッシュカード・通帳)
- 実印そのもの(保管場所を聞くのはOK)
- 本人が知られたくない通帳の中身
聞くのは「ありか(場所)」だけ。
中身や暗証番号まで聞き出して保管してしまうと、あとあとトラブルの元になります。
とくに、きょうだいがいるご家庭では要注意です。
「あの子だけが財産を狙っている」という誤解が、相続のときに一気に噴き出します。

きょうだいがいる方は、聞く前に「みんなで知っておこうね」と話を合わせておくのが、いちばん安全です
困ったら、第三者の力を借りる
親子だと、どうしても感情がからんで、話が進まないことがあります。
そんなときは、第三者の力を借りるのも手です。
頼れる相談先
- 地域包括支援センター(市区町村ごとに設置)
- 市区町村が開く「終活セミナー」
- ファイナンシャルプランナーや司法書士の無料相談
「専門家がそう言っていたから」というクッションが入るだけで、親御さんも素直に話してくれることが、よくあります。
ポテチからのお願い
親のお金の話は、聞きにくい。
これは、もう、本当に、聞きにくいです。
でも、聞かないまま親御さんが倒れてしまったら――家族みんなが、もっと大変な思いをします。
ポテチがご家族に伝えたいこと
- 「元気なうち」が、いちばん話しやすいタイミング
- 聞き出すのは「ありか」だけ。暗証番号や実印は預からない
- 一度で全部聞こうとしない。少しずつ、何回かに分けて
- きょうだいがいる場合は、事前に話を合わせておく
- 親子だけで難しければ、地域包括支援センターに相談
親御さんを傷つけたくない、というその気持ちが、いちばん大切です。
その気持ちさえあれば、切り出し方は、きっと見つかります。
家族のお金と、親御さんの尊厳。
どちらも、大切な「守りたいもの」です。
今日の話が、誰かの「あ、こんな聞き方ならできそう」につながれば、ポテチはうれしいです。

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