ポテチの同僚の元職場では、セラピストが個人でポジショニンググローブを持ち、臥床中の患者さんに対して「圧抜き」をしてからリハビリを終了していたそうです。ちょっとの行為ですが、その積み重ねが褥瘡予防につながる――まさにその通り。褥瘡は服のよれでも容易に生じます。特に痩せていて円背が進み、自分で体動できない方は、本当にあっという間に褥瘡ができてしまいます。
ポジショニンググローブとは?
手掌〜前腕にクッション性を持たせた手袋状の用具。
指先でつまむのではなく、手のひら全体で支える動作を助け、皮膚に余計な圧・摩擦・ずれをかけずに体位調整(背抜き・お尻の圧抜き等)を行うために使います。筋張って皮膚が薄い方、骨突出が強い方に有効です。

ポジショニング・グローブ MPG(2マイイリ) モルテン
使用する場面と効果
- ベッド上:背抜き/仙骨・坐骨部の圧抜き/肩甲部のずれ戻し
- 側臥位:脇・骨盤周りのすき間づくり、下肢の支持面調整
- 移乗後:車椅子着座後の骨盤後傾・側屈の微修正
効果:局所圧の低減、摩擦・ずれの抑制、呼吸・嚥下がしやすい姿勢づくり、疼痛の軽減、安楽の向上。
ポイント:「たった10秒」の微調整でも、回数×日数の積み重ねで皮膚状態に差が出ます。
用意するもの
- ポジショニンググローブ(清潔なもの)
- 薄手クッション/バスタオル(脇・膝・踵などのすき間づくり用)
- シーツと衣類のしわを整える意識(まずは整える!)
実際の使い方:5ステップ
- 装着:グローブをはめ、指でつままず手掌面でそっと支持。
- 背抜き:両手を背中に入れ、まずシーツ・衣類のしわをフラットに。マットを下に押すように、肩〜肩甲部のよれを整える。
- お尻の圧抜き:骨盤を軽く持ち上げ、左右どちらかに2〜3cmだけ位置微調整。大きく動かす必要はありません。
- 肩・頭のライン:肩が前に入る方は、肩甲骨をやさしく後方へ戻し、頭部と胸郭のラインを合わせる。
- クッション追加:脇・膝・踵など骨突出にすき間(空気層)をつくる。踵はわずかに浮く程度が理想。
コツ:「整える→圧を逃がす→すき間づくり」の順。ベッドアップ前後で再チェックすると、呼吸や表情が変わります。
声掛けの例(そのまま使える)
寝たきりの方は、ともすると「意識がないのでは?」「聞いてないのでは?」と思いがちですが、いえいえ、ちゃんと聞こえてますよ。しっかりと声掛けを行いましょう。

少し楽にしますね、今から背中のしわだけ整えます

お尻が当たるところ、2センチだけ動かしますね。痛くないですか?

肩の位置だけ戻します。呼吸が入りやすくなるはずです
よくあるNG/注意点
- 指でつまむ・押し込む:局所圧・ずれが増え、皮膚損傷のリスク。
- しわを整えないままクッション追加:根本原因(摩擦源)が残り逆効果。
- 一度で大きく動かす:疼痛や筋緊張を誘発。小さく丁寧にを徹底。
- 清潔管理を怠る:グローブは個人使用・清拭/交換を基本に。感染対策は施設基準に準じる。
“服のよれ”だけで褥瘡が起きる理由
褥瘡は圧力+摩擦+ずれの相乗で発生します。痩せ型・円背・自動運動困難などの条件下では、布1枚分の局所圧でも血流低下が生じやすく、長時間で組織障害に至ります。だからこそ、「しわを伸ばす」「2〜3cmの微修正」といった小さな介入が有効です。
まとめ:10秒の積み重ねをチームで
「特別な技術」よりも、気づける目と整える手。
ベッドアップの前後や離床前後にルーティン化して、誰がしても同じ質で実施できるよう、介護・看護・リハで共通言語にしていきましょう。
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「今日の10秒」が、1週間・1ヶ月で大きな差になります。まずは“しわを伸ばす”から。


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